少子化の隠れた原因
少子化。。。
その原因は、晩婚化だとか、若者の収入減少だとか、教育費の高騰だとか、あるいは保育園の数が足りないだとかって言われている。日本人がみーんなワーカホリック気味なのもきっとその一因だろう。
ここでは、あえて、違う視点を追加してみる。
子育ては楽しい。勿論大変だけど。
でも、何がイヤかって、小学校、中学校の各種役員の仕事や催し物参加、これほど気が重いものはない。
小学校の時には学童保育に子供を入れる。そうすると今度は学童保育での保護者会議があり、ということは当然、保護者会の役員が必要になる。
学童に入れるくらいだから保護者はみんな共働き。会議は夜開催される。ちび一人を家においておけないので会議に連れて行く。7時半ぐらいに会議を始めて終わるのは10時ぐらい。ちびの明日の準備とか自分の準備は会議を終えて自宅に帰ってからになる。一ヶ月に一度開かれるこの会議に出席するのも結構大変だったりする。仕事をしているから学童なんだけど、学童に入れてるから逆に大変なんじゃないかって思ったりする。しかし、困ったことに、と言うか、当たり前のことだと言うか、会議の内容は結構大事なことが多いのでやっぱり参加しないというわけにはいかない。
小・中学校の役員はどの保護者でも必ず経験せねばならず、入学前から父兄は子供が何年生の時に何をやるか、真剣に考える。希望通りに行くこともあるし、もちろん行かないこともある。子供が一人なのか複数なのか、上が何年生の時、下が何年生なのか、など、その人の状況によって、いろいろ考えて何とか役員をやる回数が少なくなるように、あるいは、負担の少ない仕事を選ぼうとする。
入学式の時に必ず見られるあの風景。みんなシーンとなる。
共働き夫婦っていまどき当たり前だから、昼間にしょっちゅう学校に来て仕事をしなければならない係などは、誰も手を挙げない。そういう係を避けるために、あえて、最初に比較的簡単な(と思われる)仕事に手を挙げる人もいる。大変なのが期間限定だったり、自宅でできることが多い係だとか。事前に情報を仕入れ、あるいは、上の子で学習しているお母さん方は、要領よく切り抜ける。
シーンの時間が長くなって、最終的にはくじ引きになる。
くじを引いて、係になっちゃって、結局仕事に支障が出て仕事を辞めたお母さんもいる。それぐらい、この時のくじ運は大事になってくる。
我が子が小学校に入学したその日、体育館でシーンが続いた。すると、一人の正義感あふれるお父さんが手を挙げた。少しイライラした様子だったので、そのお父さんはきっと(なんて自分勝手な奴らばかりなんだ!!)と怒っていたのだろう。
くじ引きになる前に、クラス委員が決定した。父兄は拍手喝采、そのお父さんは一躍その場のヒーローとなった。
ところが、、、である。
5月になって我が子がプリントを持ち帰ってきた。クラス委員さんが音を上げたのである。「○×さんがこれまでクラス委員を頑張っておられましたが、どうしても、仕事の都合上、継続が困難だそうですので、改めてクラス委員を選定したいと思います。つきましては・・・」という内容だった。
入学式の日、うちに帰ったお父さんがお母さんに叱られていた図が想像できる。
お父さん方は概して学校行事参加がいかに大変かよくわかっておられないと思う。だから、誰も手を挙げないその時の雰囲気に耐えられず、思わず手を挙げてしまったのだろう。やってみて愕然としたはずだ。
この「大層面倒なこと」から解放されたならば、あと一人や二人、産んでもいいなぁと思っている人は、実は少なくないのではないかと思う。
一人育ててみてその大変さを経験すると、同じ事を繰り返すのを躊躇するのである。
あるいは、最初から、そのことを計算して、ポロポロと続けて出産する、という手もあるだろう。しかし、思わず二番目ができなかったりして間があくと、学校行事や役員の事を含めて、また一からやり直しなのかといろいろと考えてしまうはずだ。
勿論、こんなのは少子化のマイナーな理由でしかないとは思う。でも、共稼ぎで妻もフルに働けば2,3人は育てられる、と思っている人が、いざ、もう一人、と考えた時、役員決めのじゃんけんで負けた時に、あるいはクジで「スカ」を引いてしまった時に、計画がすべてパーとなる博打的状況があることが、不安を乗り越える勇気を奪ってしまうことは、統計上の数字として出てこないにしても、決して無視できないと思うのである。
役員も複数で行うので、どんな人たちが集まるかも大いに影響する。
私の場合は、非常にラッキーだった。
仕事は大変だった。しかし、昼間動ける人がいたこともあって、役割分担があっという間に決まり、メールで常に連絡を取り、1年間を無事に乗り越えることができた。仲間に助けられた。仕事への影響は最小で済んだ。あんまりスムースに行ったので、すっかり意気投合し、一度だけみんなで飲み会を開いた。
私と一緒に仕事をしているスタッフのうちの一人が、小学校の役員活動にあまりにも無駄な時間が多いということにため息をついた。ベルマークを切って貼る作業を、なぜか全員、学校に集まって行うらしい。しかも、何度も行う。顔を合わせて世間話をすることに意義がある、という意見ももちろんあるだろう。しかし、様々な家庭事情を抱えた人たちが一つの仕事をするのだから、仕事は効率的にやる方が絶対にいい。世間話は、別の機会を設ければいいだけの話だ。こんなものはそれぞれが自宅でやればいいのにと思う。もしかしたら私だったらお金を払って誰かを雇い学校に行かせるかも知れない。いっそベルマーク活動そのものを止めてしまえばいいのにと思う。一円のベルマークを切って貼る作業。。。その作業にどれだけの時間と手間がかかっていることだろう。何だかむなしくならないか。
役員を担う男性は基本的にいない。
学校行事は女性の仕事である。
男性が学校行事に強制的に参加させられれば、もう少し状況は改善するのではないかと思う。日夜、徹底的に仕事の効率化を研究、実践している中堅社会人にこそ、学校保護者会やPTA活動に参加し、大いに今の在り方に疑問を持ってもらいたい。女性だけが嫁姑の家事伝授のようなやり方で、前近代的方法に固執している限り、ちっとも前進しないんじゃないかと思う。
日本文化の良さを外国人旅行者や留学生、日本で仕事をしている外国人から教えられることは少なくない。
同じように、教育現場にこれまであまり顔を出さなかった男性がもっともっと参加すべきだ。見る目が変われば必ず現場が変わる。
同じことを、いくらおっさん化したとは言え、女の私が言うのと、イケメンお父さんが言うのでは、耳を傾けてくれる人数が圧倒的に違うに違いない。第一、折角みんなでワイワイやろうと盛り上がっている所に水を差すのは、同姓には荷が重すぎるのである。
それからもう一つ、なかなか改善しない別の理由は、6年間、あるいは3年間を無事に、いや、実際には、自分が役員を担当する、その1年間を無事に過ごしさえすれば、とりあえず、個人的には問題ではなくなることだ。
みんな不満をもっていながら、1年間終えれば、関係ないことになる。だから、誰も真剣に改革しようと思わない。
今は、メールもある。スカイプもある。話し合いだって、ネット上で済ますことも技術的には可能である。
何かもっと画期的な方法だって、きっと沢山あるはずだ。おばさんには思いつかないすばらしいアイデアが、若い柔軟な人の頭から出てこないはずがない。
ここが根本的に変わってくれれば、「風が吹けば、、、」ではないが、少子化にも多少の歯止めがかかるのではないか、と、おっさんおばさんは愚考するのである。